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M&AのマッチングをAIで効率化

プロジェクトの概要

M&Aのカギとなるのはマッチングです。数多ある中堅・中小企業の中から、スピーディーかつ正確に買い手候補を見つけるため、日本M&Aセンターは2019年10月、AIによるマッチングを導入しました。コンサルタントたちが日々蓄積している圧倒的な質と量の揃ったデータを機械学習させることで、他の追随を許さない高精度のマッチングを実現。コンサルタントの生産性向上だけでなく、譲渡企業の受託率の大幅アップという効果ももたらしています。

 

菊地原 拓
(日本M&Aセンター デジタル統括部副統括部長)
青柳 隆司
(日本M&Aセンター データマーケティング部部長/
マッチング管理課課長)

高精度のM&Aマッチングには、圧倒的な質と量のデータが不可欠

高精度のM&Aマッチングには、
圧倒的な質と量のデータが不可欠

菊地原 :M&Aが成功するか否かの要素の一つにマッチングがあります。特に、日本M&Aセンターが向き合うのは中堅・中小企業です。以前は数多くの企業の中から、最適な買い手候補を見つけ出すことに時間がかかり、コンサルタントの知見と技量に左右されていました。しかし、530名余り在籍しているコンサルタントの知見を共有し、このデータをもとに買い手候補をレコメンドすることができれば、精度の高いマッチングをスピーディーに実現できるはずです。個人の知見には限界がありますが、全員のデータを用いることができれば、マッチングの可能性ははるかに広がり、より良い選択ができるでしょう。実は私が入社した2018年当初、当社のIT化は正直、遅れていました。Salesforceは導入されていましたが、十分活かされていませんでした。今後のビジネスのスケールを考えれば、AI導入を含むITによる生産性の向上は欠かせません。こうした思いのもとで「データマーケティング部」が発足し、マッチングへのAI導入がスタートしました。

企業の業種や地域、売上といった単純なデータだけを用いてマッチングさせるのは簡単なことです。AIを使うまでもありません。しかし、M&Aのマッチングに必要なのは、表面上のデータからはわからない部分です。たとえば業種分類コードで「電気工事」に分類されていたとしても、実際は幅広い事業を手がけていたり、ニッチな得意分野を持っていたりします。そこで当社のシステムでは、事業内容の記されたデータを自然言語解析し、AIで処理してマッチングに役立てています。

登録企業数は130万社、訪問企業数は13万社に上り、各社への訪問などの活動記録は毎月15,000件ずつ増えています。買い手候補企業からヒアリングした新規の買収ニーズ登録量もこの2年で15,000件に上ります。こうした圧倒的なデータをもとに、接触済みの企業同士のビッグデータによって30万通り、AIによって未接触企業も含め70万通りの組み合わせを生成しております。これにより売り手企業1社につき、100社以上の買い手候補リストをレコメンドしています。さらに、このリストを見たコンサルタントが、有力な買い手候補だと判断すれば「マッチング候補登録」を行います。その数は毎月17,000件程度になります。これを学習することでマッチングの精度はさらに高まります。こうした圧倒的な質と量を誇るデータは、日本M&Aセンターだからこそ得られるものです。だからこそ当社のAIマッチングは、他社とは一線を画している。そう自負しております。

マッチング活動時間は半分程度にAIマッチング活用により譲渡受託率は40ポイント上昇

マッチング活動時間は半分程度に
AIマッチング活用により譲渡受託率は
40ポイント上昇

青柳 :私はM&Aコンサルタントとして30件以上のM&A成約に携わった後、2019年4月より「マッチング管理課」、2021年4月からはマッチング管理課兼務で「データマーケティング部」を率いています。このような経歴からM&Aの現場に根ざした立場でIT活用を推進しています。SalesforceもAIマッチングも、導入当初から順調に活用されていた訳ではありませんが、地道な啓蒙活動によって現場へのIT浸透を図ってきました。そういった地道な活動から現在ではAIマッチングの活用も徐々に広がりを見せています。

マッチング活動の課題は、譲渡企業とシナジー効果を発揮する譲受企業を探すことに極めて多くの時間がかかることです。それはデータベース検索を行ったり企業HPや業界団体を調査したりと手間がかかる作業があるためです。レコメンドにより譲受候補企業がリストアップされるためマッチング時間は大幅に短縮することができます。その時間をコンサルタントは提案活動や顧客とのコミュニケーションへ割くことができるようになりました。

さらに、リストアップされる譲受候補企業は過去の成約事例、マッチング事例をもとにしているためどのようなシナジー効果が期待できるのかといったことを事前に把握することができるようになります。それによりスムーズな提案ができるようになりました。しかも、こうしたマッチングを新人もベテラン社員も同水準で行えるというのも大きなメリットです。時にはベテラン社員さえ驚くようなマッチングを的確な根拠をもとに提示してくれることもあります。AIマッチングの実力を早く多くの人に実感してほしいと思います。
良い意味で想定外の成果もありました。実は、現場では譲渡契約前の段階で使われていたのです。譲渡を検討している社長は「どんな企業が譲り受けてくれるのか?」といった不安を感じています。この不安に対して一部のコンサルタントがレコメンドする企業を提示していました。その結果、安心感を醸成することができ、高い確率で譲渡企業様との契約を締結できていて、レコメンドリストを活用しない場合と比べ契約締結率は40ptsも高いことが分かりました。
このような成果を迅速に発信することでAIマッチングの活用がさらに進むことを期待しています。

新サービスをリリース!若手の力で進化を加速

新サービスをリリース!
若手の力で進化を加速

青柳:M&A仲介を行う上で、情報は極めて重要です。企業の財務情報は調査会社から得ることができますが、M&Aに関する企業情報やオーナー情報はどこにもありません。この情報を当社では、530名超のコンサルタントが日々収集しています。
この情報を正確かつ詳細にデータベース化することでさらに進化することができるため、それに向かって日々業務改善に取り組んでいます。

菊地原:コンサルタントが情報更新すればするほど「使えるデータ」になっていきます。必要なデータを入力してもらうために、青柳さんが「一定以上入力を怠る人は、名前を公表してシステムを使えなくする」という強行策に出たこともありましたね(笑)。おかげで必要なデータをきちんと入力してくれるようになりました。例えば提案後の顧客反応のデータなどです。これらは精度の高いマッチングには欠かせません。今後、AIが順調に学習を重ねていけば、さらなる精度の高い候補企業をリストアップするだけでなく、完全に自動でマッチングを実現するところまで完成度を高められるでしょう。会社の創業の経緯、数年後の目標やゴール、強み・課題、オーナーの息子さんの年齢など、コンサルタントはまだデータになっていない情報をたくさん持っています。今後、こうした情報を集積し、自然言語処理することで、例えば「そろそろ譲渡を考える時期だから提案してみては」とレコメンドすることもできます。

青柳:今後の方向性のひとつとしてWeb領域への拡張があります。例えば2021年9月、社内で『M COMPASS』と呼ばれているAIマッチングサービスが対外的にリリースされました。AIマッチングをうたうサービスはネット上にもたくさんありますが、日本M&Aセンターは譲渡企業に対して「この企業がなぜ御社に興味を持っているのか」「御社にどんなメリットがあるのか」「M&Aによってどう成長していけるのか」の根拠をもって示すことができます。単なる机上のマッチングリストではありません。ここが他社のマッチングシステムと大きく違うところです。

菊地原:AIプロジェクトには20代のメンバーが3人いて、レコメンデーションエンジンのバージョン2は彼らが中心になってリリースしたものです。今後も彼らが若手コンサルタントと積極的な意見交換を行い、若手の着想でさらにマッチングの生産性が加速しそうです。